日中外相会談で岩屋外相が「村山談話」に言及と中国側発表 日本側発表文には記載なし

中国の王毅外相(右)と握手する岩屋外相=25日、北京の釣魚台迎賓館(代表撮影・共同)

北京で25日に開かれた岩屋毅外相と中国の王毅共産党政治局員兼外相との日中外相会談を巡り、中国側は岩屋氏が過去の侵略と植民地支配へのおわびを表した戦後50年の村山富市首相談話に言及したことを成果として強調した。一方、会談内容に関する日本側の発表に歴史問題のくだりはなく、両政府の力点の違いが浮かび上がった。

中国外務省は、会談で岩屋氏が王氏に対し「歴史問題では『村山談話』の明確な立場を引き続き堅持し、深い反省と心からの謝罪を表明する」と述べた、と発表した。

これに対し、日本外務省が発表した会談内容の説明文には、歴史問題も村山談話も含まれていなかった。

日本外務省によると、会談で話題が歴史認識に及んだ際、岩屋氏が、村山談話と2015年の戦後70年の安倍晋三談話を挙げて「石破茂内閣は、これまでの談話を引き継いでいる」と説明したという。

実際には村山談話だけでなく、未来志向の安倍談話にも言及していたが、中国側は岩屋氏が「国策を誤り、植民地支配と侵略」で「アジア諸国の人々に多大な損害と苦痛を与え」たとする村山談話だけに言及し、岩屋氏が改めて「反省とおわび」を表明したと対外発表した形だ。

岩屋氏は訪中前に香港のフェニックステレビの単独取材に応じ、「個人の考え」として「わが国は一時期、国策を誤ったと思っている」と村山談話の文言に言及していた。

村山談話を強調する中国側の発表からは、中国政府が引き続き日中関係で歴史問題を重視していることがうかがえる。一方で、中国は9月に日本産水産物の輸入再開の方針、11月に日本へのビザ免除の再開をそれぞれ発表しており、国内世論から日本への一方的な譲歩と受け取られて批判されないよう、村山談話を成果として強調した可能性もありそうだ。

発表内容の相違について日本外務省は「日中それぞれの観点から大事だと思うことを成果として発表している」としている。

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