警視庁による現場検証で、海保機のコックピット部分を調べる捜査員ら=羽田空港で2024年1月4日午後2時27分、手塚耕一郎撮影
東京・羽田空港で1月に日本航空(JAL)と海上保安庁の航空機が衝突した事故で、25日に発表された運輸安全委員会の経過報告では、空港のシステムや管制官が海上保安庁機の誤進入を察知していたことが明らかになった。しかしミスが重なり、衝突を回避することはできなかった。
羽田空港には、滑走路への誤進入を検知すると管制官の手元のモニターに警告を出すシステムがある。事故当日も、海保機が停止位置を越えた直後から衝突までの1分8秒間、警告が表示されていた。
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事故直前の海保機の状況と機長の認識
だがC滑走路の担当管制官は表示を見ておらず、進入に気付かなかった。普段から誤表示が起きるため軽視され、表示された際のルールも決まっていなかった。警告を音声で知らせる機能もなかった。
一方、担当が異なる別の管制官は事故直前、進入した海保機をモニター上で見つけていた。着陸のやり直しが起きると、この管制官が担当することになる。そのため、着陸してくる日本航空機について、C滑走路の担当管制官に尋ねたが、海保機の誤進入については伝えなかったという。
運輸安全委の元統括航空事故調査官、楠原利行さんは「管制側のヒューマンエラーも事故につながった。ルールがなく、システムが適切に運用されなかったことも検証が必要だ」と指摘。国土交通省は事故後、誤進入を警報音で知らせるシステムを羽田空港などに導入し、管制官も増員して再発防止策を進めている。
一方、警視庁は両機の機長や管制官らを聴取し、業務上過失致死傷容疑を視野に捜査している。今後は経過報告を踏まえ、関係者への再聴取を実施。両機のボイスレコーダーや管制官の指示の記録と照らし合わせるなどして、両機と管制塔の3者の過失割合の特定を進めるとみられる。【原田啓之、岩崎歩】