第41回ホープフルS 1着クロワデュノール
(ホープフルステークス、2024年12月28日 15:40、GI、中山11R、芝・右2000m)
単勝1.8倍の断然人気に推されたクロワデュノールが好位追走から抜け出し、デビュー3連勝でGⅠ初制覇。北村友一騎手(38歳)=栗東・フリー=は骨折による長期休養を経て2020年有馬記念(クロノジェネシス)以来のGⅠ制覇を飾り、大粒の涙をこぼした。2着は6番人気ジョバンニで、3着には向こう正面で先頭に立った17番人気ファウストラーゼンが粘り込んだ。
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大けがを乗り越え、表彰台に戻ってきた。懐かしい光景に、思いがあふれた。1番人気のクロワデュノールが、無傷の3連勝でGⅠタイトルをゲット。2020年有馬記念以来、4年ぶりにGⅠのお立ち台に上がった北村友騎手は、人目をはばからずに号泣した。
「またGⅠを勝つことができました。本当にたくさんの方々に助けていただき、応援していただいて、ここにまた導かれたのだと思います。本当に皆さんに感謝の気持ちを言いたいです。ありがとうございます」
デビュー14年目の2019年、大阪杯(アルアイン)でGⅠジョッキーの仲間入り。翌年にはクロノジェネシスで春秋グランプリを制覇し、軌道に乗ったかと思われた。しかし、21年5月2日の阪神2Rで落馬し、背骨や肩甲骨を骨折する大けが。リハビリは1年以上に及んだ。先の見えない戦いに心が折れそうになったとき、原点に立ち返った。
「馬に乗ることが好きで、馬が大好き。それが一番楽しいし、一番のモチベーションになりました」
サラブレッドへの思いを原動力に変え、劇的なカムバックを果たした。この日は相棒とロケットスタートを決め、出入りの激しい展開にも動じずに好位を追走。抜群の手応えで抜け出し、2馬身差をつけてゴールに飛び込んだ。
「うまく誘導してくれて、馬もそれに応えて勝ち切ってくれました。やりたいことを全てやってくれました」。斉藤崇調教師は鞍上と固い握手を交わした。運命の巡り合わせか、4年前にグランプリを制したコンビで再びの戴冠だ。「クロノジェネシスのときに良くしてもらえて、引退まで乗ってもらいたいと思っていたなかでの大けがだったので…。またGⅠを勝てたのはうれしいことですし、あのときできなかったことを、この馬と一緒に実現できれば最高ですね」と夢の続きに思いをはせる。
次走は明言されなかったが、当然、視線はクラシックをとらえる。ジョッキーが「可能性のある馬ですし、これからどれだけ成長してくれるか楽しみ」と語れば、指揮官も「皐月賞と同じ舞台で勝てたのは自信になるし、胸を張って来年に向けて頑張っていけます」と意気込む。クロノでかなわなかったクラシックの頂へ。冬空に昇った一等星が、止まっていた時計の針を動かした。(山口遥暉)
■クロワデュノール 父キタサンブラック、母ライジングクロス、母の父ケープクロス。青鹿毛の牡2歳。栗東・斉藤崇史厩舎所属。北海道安平町・ノーザンファームの生産馬。馬主は㈲サンデーレーシング。戦績3戦3勝。獲得賞金1億1678万9000円。重賞は2024年GⅡ東京スポーツ杯2歳Sに次いで2勝目。ホープフルSは北村友一騎手が初勝利、斉藤崇史調教師は21年キラーアビリティに次いで2勝目。馬名は「北十字星(フランス語)」。
◆売り上げ、入場人員 ホープフルSの売り上げは185億5554万7700円で前年比131.6%。28日の中山競馬場の入場人員は3万5933人で同143.7%だった。
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【アラカルト】
◆北村友一騎手 4回目の騎乗で初勝利。JRA・GⅠは2020年有馬記念(クロノジェネシス)以来で、通算6勝目。
◆斉藤崇史調教師 21年(キラーアビリティ)以来で、通算2勝目。JRA・GⅠは22年エリザベス女王杯(ジェラルディーナ)以来で、通算8勝目
◆キタサンブラック産駒 今年出走の3頭を含む5頭の出走で初勝利。JRA・GⅠは23年ジャパンC(イクイノックス)以来で、通算7勝目。
◆馬主:㈲サンデーレーシング 23年(レガレイラ)に続き、通算5勝目。JRA・GⅠは有馬記念(レガレイラ)から2週連続で今年6勝目、通算81勝目(他にJ・GⅠ2勝)。
◆生産者:ノーザンファーム 20年(ダノンザキッド)から5年連続で、通算15勝目。JRA・GⅠは有馬記念から2週連続で今年11勝目、通算213勝目(他にJ・GⅠ3勝)。
◆関西馬の勝利 22年(ドゥラエレーデ)以来で、通算成績は関東馬5勝、関西馬35勝、地方馬1勝。
◆単勝1番人気馬の勝利 23年に続き、通算14回目。
◆東京競馬場デビュー馬の勝利 ホープフルSがGⅠに昇格した17年以降、初めて。
◆払戻金 以下の式別で当レースの式別ごとの最高払戻金額を更新。複勝⑪3810円(従来は1410円)、ワイド①⑪4万7860円(同1万3070円)。