<中山11R・ホープフルS>レースを制したクロワデュノール (撮影・村上 大輔)
24年の中央競馬を締めくくる2歳G1「第41回ホープフルS」が28日、中山競馬場で行われ、断然の1番人気クロワデュノールが無敗3連勝でG1初Vを飾った。鞍上の北村友一(38)は大ケガを乗り越え、4年ぶりのG1制覇。管理する斉藤崇史師(42)は21年キラーアビリティに続くホープフルS制覇となった。 新たなスター誕生を確信した。堂々たる歩みで引き揚げてくるクロワデュノールに万雷の拍手が降り注ぐ。気品とたくましさを兼ね備えた2歳馬に見る競馬界の希望。3走全てで手綱を取る北村友は「スターホースになってほしい。その可能性がある馬だし、どれくらい成長してくれるか楽しみ」と目を輝かせた。 王者襲名にふさわしい振る舞いだった。好スタートを切っても距離ロスの少ないインではなく、進路を確保しやすい好位の外を選んだ。向正面でスローを嫌った馬が捲っても動じない。馬の力を信じた。「勝利を確信したのは4コーナー」と北村友。難なく加速、一気にトップスピードへ。内で粘る2頭、脚をためる後方勢は眼中になかった。力を出し切ることだけを考えた。最後は後続を2馬身離した。鞍上は「ポジションが決まるまでに時間がかかったり、捲る馬がいたり、本当の意味でリラックスして走れるところはなかったのかも。それでも、馬を信じて強い競馬ができました」と愛馬を称えた。 18年サートゥルナーリア、19年コントレイルなどに続く無敗3連勝での戴冠。その才能は早くから輝いていた。斉藤崇師は「1歳の4月くらいに初めて見ましたが、凄くバランスが良くてしなやかだった」と回顧。良化途上の東スポ杯2歳Sを制したことで、その見立てが間違っていなかったと確信した。「心肺機能が凄い。競馬界の中心がこの馬になれるようにやっていきたい」と明るい未来に言葉が弾む。 北村友は21年の落馬で椎体骨折や右肩甲骨骨折などの大ケガを負った。過酷なリハビリ、復帰後も思うようにいかない騎乗に苦しんだ。それだけに4年ぶりのG1勝利に、涙が止まらなかった。「心が折れそうになることは何度かあったけど、馬が好きという気持ちで頑張れた。馬に乗りたいというのが一番のモチベーションだった」。馬への愛情が、最高の相棒と引き合わせた。 具体的な次戦は未定だが、指揮官は「この先は皐月賞、ダービーを目指すことになる」と明言した。王道を歩み世代No・1を証明する春がくる。北村友は「欠点がない馬。総合力が高いし、(距離が延びても)変に意識することはない」と来春の戦いにも自信がのぞく。昨年イクイノックスに続き、ドウデュースもターフを去った24年。どこか寂寥(せきりょう)感の漂った師走の中山に、まばゆい希望の光が差し込んだ。 ◆クロワデュノール 父キタサンブラック 母ライジングクロス(母の父ケープクロス)22年3月21日生まれ 牡2歳 栗東・斉藤崇厩舎所属 馬主・サンデーレーシング 生産者・北海道安平町のノーザンファーム 戦績3戦3勝(重賞2勝目) 総獲得賞金1億1678万9000円 馬名の由来は北十字星(フランス語)。 《堀田真由も感動》女優の堀田真由(26)がホープフルSの表彰式プレゼンターを務めた。競馬場来場が初めてという堀田は「24年最後のG1レースでプレゼンターを務めることができて、大変光栄でした。ターフを駆け抜ける競走馬の姿を間近で見ましたが、サラブレッドの美しさと迫力に感動しました。歓声も熱気にあふれていて、さまざまな年代に愛される中山競馬場に歴史も感じました」と語った。 《ノーザンF中島GM「王道の競馬」》クロワデュノールを生産したノーザンファームの中島文彦ゼネラルマネジャーは「北村(友)騎手も落ち着いて乗ってくれてとてもいい競馬ができたのではないかと思います。王道の競馬をして勝ってくれたので来年も本当に楽しみです」と笑顔。母のライジングクロスは1歳にキタサンブラックの牡馬、当歳にサトノダイヤモンドの牝馬がいる。
《サンデーR吉田代表は高い適応力に驚き》馬主サンデーレーシングはG1昇格後、17年タイムフライヤーと昨年レガレイラに続く3度目の勝利。吉田俊介代表は「集中力を欠いても不思議ではない展開。よく頑張ってくれたと思います」と愛馬を称える。続けて「厳しい競馬を3戦目でできた。これまで10何頭という競馬しか経験していなくて、なかなかチャレンジで厳しいかなと思っていて…。でも(勝って)良かった。センスがあるなと思いました」と適応力の高さに驚いていた。